昨年、初めて Mac OS X 10.4 (Tiger) の全容が公開されたときに書いたエントリで、新機能にあまり魅力がなくこのままでは Mac OS がどんどん陳腐化してしまうことを心配した。 それから約半年後、質問をしながら実際に動いているのを見て少し意見が変わってきた。 まだ問題もないわけではないが、Apple は少しでも OS を良くしていこうと努力しているのが感じとれたのだ。
今回、とくにグッときたのは以下の技術:
Spotlight
Google, Yahoo!, MSN などが覇権を争っているデスクトップ検索の分野に対する Apple のソリューションとして Tiger に導入されるのが Spotlight という機能。 メニューバー付近にある検索窓に文字を入力すると検索結果が表示されていくデモが印象的だが、オレはむしろ検索したあとの表示の仕方に興味を覚えた。
検索結果の表示方法の一つが下のスクリーンショット。 検索結果を種類ごとや、日付け、作成者に応じてグルーピングをする機能、Home 以下にあるファイルのみ、サーバ上にあるファイルのみといったフィルタリングの機能が用意されている(あまりキレイに撮れなかったので必要ならAppleサイト内のムービーも参照して欲しい)。 検索は一度でズバリ見つかることは少ないので、はじめは大まかに、そのあと絞りこみをして見つけるというスタイルが多くなると思う。 そういったところをちゃんとカバーしているところに好感をもった。ちなみに、Safari RSS も RSS の表示に同様のフィルタリングができた。
そして、検索、フィルタ、グルーピングの状態を特殊なフォルダとして保存しておけるので、次からはそのフォルダを開くことで関係したファイルが自動的に表示することができる。 これはユーザのファイル管理の方法を大きく変えるかもしれない。 デスクトップ検索の機能はまだ Google Desktop Search しか使ったことがないが、こういった機能は Google Desktop Search にはなく、OSに組みこまれた機能ならではというところだろうか。
Spotlight の検索結果管理画面
この技術の唯一かつ最大の弱点は Apple が標準でサポートしているフォーマット以外をSpotlightの検索対象にしようと思った場合はインポーターと呼ばれるライブラリ(API?)を3rd Party が用意しなければならないこと(Palm OSみたいだ)。 Apple のがんばりとは関係なく、こういった新技術のサポートはなかなか進まないのが一般的なので、そこに不安が残る。 ただ、 HTML/PDF/DOC/XSL あたりは最初からサポートされるようなので(DOC/XSL は説明員も「たしか…」とちょっと怪しかったが)、多くの人には問題ないかもしれない。
Automator
先日の基調講演では省略されたが、オレが気になっていたのが Automator という機能。 Apple は以前から作業の自動化のために AppleScript というテクノロジを用意していたが、本格的に動かすためには簡単なプログラミング言語を覚える必要があったためイマイチ普及しなかった。
Automator はその欠点を克服すべく開発されたようで、ワークフローと呼ばれる自動化作業を作成する画面がとても面白い。 対応するアプリーケーションを選び、そのアプリケーションが持つアクションを選び、そのオプションを指定するという作業を繰り返していく。 プログラミング的な要素は極力排除され、作業を順に並べるような形で編集する様子はとてもストレートだ。 プログラマーからするとオブジェクト指向とはコレ! という感じだし、実はこのワークフローの作成の流れは英語の文法に沿っているのも興味深い。 (このムービーの場合、Safari gets image URLs from website. Safari downloads these URLs into Picture folder. Finder creates archive of them as wedding_photos.zip. と英語にすることができる。)
ここで、また問題なのだが説明員は Automator は AppleScript とも別のテクノロジで、対応するためには、またも 3rd Party の対応が必要となると言っていた (Webサイトの情報ではAppleScript でアクションを追加できると書いてあるが…)。 こちらもどれくらい対応されるか気になるところだ。 そして、上で褒めたワークフローの作成にも問題はある。 それはやりたいと思ったタスクを細かく分解する思考だ。 たとえば、このページの「画像を全部保存して zip したい」という目標に対し、ワークフローでは「画像URLの抽出」、「抽出したURLのダウンロード」、「ファイルのzip」 というさらに細かい3つのタスクに分解しなければならない。 これは目には見えないがプログラミングに必要とされる重要な技術で慣れない人には大変かもしれない。
Dashboard
もう基調講演などでやっている通り、カレンダーや時計など、ちょっと見たいときにこういうのがあるととても便利。 ウィジットと呼ばれるパーツを裏返すと設定画面が出てくるところなんかはちょっと Project Looking Glass っぽい。 HTML/JavaScript で書かれていて、サイズも小さくメモリもそんなに消費しないと言っていたがほんとうだろうか?
さて、このTiger。 オレのような2,3年前にMacを買ったユーザにとってみるとアップグレードをしてスピードが遅くなるのではという心配がある。 そこで、説明員に「Tiger は Panther や Jaguar と比べて早い?」 と聞くと 「Way faster (ずっと早い)」 という回答が返ってきた。 自分のは一番初期の Flat Panel iMac だけどそれでも? と聞いても 「yes (そうだ)」という自信満々の回答。 別の説明員に聞いても、「ベンチマークテストでは遅くなる部分もあるかもしれないが、オーバーオールでは早くなる」という答えが。 これは期待できるか?
ただ、そのあと、Apple は常にパフォーマンスを意識した製品作りをしているとか、画面に表示されるエフェクトはグラフィックカードにやらせるからCPUは余裕があるという答が二人から返ってきたので、この辺の回答はマニュアル化されているだけなのかもしれない。
Mac OS X 10.4 Tiger は 2005年前半の発売予定(ということは6月だろう)。 成功するか失敗するかは Apple ではなく、3rd Party やユーザが実際使ってみることで决まりそうだ。 みなさんはどんな印象?
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