クリスマスや正月気分も抜けたこの時期、例年ならドラマ 「24」 の放送が始まり、「Heroes」などの他のドラマの放送も再開されるはずなんだけど…今年はどちらも放送されていない。

この原因は昨年の11月から始まっているハリウッドの脚本家組合のストライキ。 このストライキにより新しい脚本が書かれないため、多くの製作現場で製作が中断になっている。

脚本のストックがなくなったドラマはこれまでの再放送や、脚本のいらないサバイバーやアメリカンアイドルのようなリアリティショーに置き換わっているが、視聴者は満足しているとは言えない状況だ。

映画に関しても同じで、現在はすでに撮影の終わった作品が公開されているが、製作は一部を除き止まっているため、数ヶ月後には新作の公開が減ることが予想される。

オレのような視聴者は娯楽のひとつが無くなるだけで全然大したことはないのだが、深刻なのはハリウッド周辺の映画・テレビ業界。 製作会社はもちろん、小道具やケータリングなどの関連会社は仕事がなくなり大赤字に。 レイオフなどをしてストが早く終了するのを待っているのだとか。 ストによる経済への影響は一説には1億ドル (1000億円) 以上とも言われている。

 

このストの争点は主に脚本家たちに渡るロイヤリティ(印税)について。

1985年に結ばれた現在の契約では製作された番組がビデオやDVDなどに二次利用された場合、収入の 0.3% (収入が100万ドルを越えたら 0.36%) が脚本家たちに渡るようになっている。 アメリカでのDVDは1枚 $15-$20 が一般的だが、そのうち5セント以下のお金しか脚本家は受けとれないということになる。

1985年当時はビデオカセットの製造や流通コストが高く(そういえば当時は映画1本 20,000円ぐらいしていたねぇ)、まだ映画・テレビ業界もビデオ販売がビジネスモデルとして確立されるかどうかわからないという主張を受けて低く押さえた。 どちらもすでに解決しているので 0.3% を 0.6% に、 0.36% を 0.72% にして欲しいという要求をしている。

そしてもう一つ、こちらのほうが重要視されているようだが、脚本家組合は今後のことを見据え、Non-Traditional Media と呼ばれるストリーミングやダウンロード販売に対するロイヤリティをこれまでとは別に、売上げの 2.5% でと提案している。

一時期、DVDの方を取り下げるので、オンラインの2.5%を認めるというところで落ち着きそうだったが、製作者サイドは1985年のときと同じく、ビジネスモデルとしてどうなるか不明なためこの数字には合意できないと決裂。 現在でも、交渉は平行線をたどっているらしい。

 

日本でもおなじみ iTunes Store をはじめ、Amazon Unbox などのオンラインの動画販売、レンタルサービスは成長してきているし、最近のアメリカではテレビ局のサイトへ行くと過去のドラマがストリーミングで見られるようになってきている。

iTunes Store のように作品ごとの売り上げがある場合はロイヤリティも計算しやすいが、ストリーミングに関しては、広告収入によるモデルが中心になり、作品ごとの売り上げは計算しにくいため脚本家へのロイヤリティも払われない。

2.5% という数字はともかく、今後ビジネスの中心になっていくと予想されるオンライン配信に関して今以上の契約が結ばれない限り脚本家たちはうかばれないだろう。

アメリカの人々も脚本家側に好意的で、特に俳優たちは先日のゴールデングローブ賞の授賞式はストが解決しない限りボイコットすると発表する人たちが続出し、毎年数時間かけて行われる授賞式は、1時間の簡易的な発表会だけとなってしまった。

2月にはアカデミー賞の授賞式が行われるが、それまでにストが解決しないとアカデミー賞の授賞式もキャンセルということになるかもしれない。

どういった形で決着が付くかはまだ全然わからないが、1ドラマファンとしてはできるだけ早くまた面白いドラマを見られるようにして欲しい。

 

今、観てる番組があとどれだけあるのか、今後どういったスケジュールになっているのかは こちらのサイトに情報がまとめられている。