Digg.com 経由、Times のオンライン版に面白い記事があった。
最近のCDは昔のように音を外れることがほとんどなくなった。 実はこれにはあるツールが力を発揮しているらしい。
そのツールの名は Auto-Tune。 1996年に Andy Hildebrand という人によって開発されたこのツールは人の声をリアルタイムに正しい音程に調整してくれるという。
このツールを使った最初のヒットが Cher の 1998年の Believe という曲。アメリカのポップ系のラジオを聞いてる人ならお馴染の曲なんだけど、35秒ぐらいのところで Auto-Tune によるエフェクトが使われている。
いろいろ調べてみたら日本で有名な Perfume が Auto Tune を多用しているらしい。
こんな感じで音程を調整してくれるというより、声にエフェクトをかけてロボっぽくするようなツールとして使われて広まっていった。YouTube でも Auto Tune で検索すると「これでキミも T-Pain や Kanye West」といったデモビデオがいっぱい見つかる。
こういった派手な部分が目立った Auto-Tune だけど、Times の記事には興味深い情報も載っていた。
Auto-Tune: Why Pop Music Sounds Perfect – TIME
Of the half a dozen engineers and producers interviewed for this story, none could remember a pop recording session in the past few years when Auto-Tune didn’t make a cameo–and none could think of a singer who would want that fact known.
(6人ほどのエンジニアとプロデューサーにこの話をしたところ、だれもここ数年の間に Auto-Tune を使わなかったレコーディングセッションは思いつかなかった – そしてそんな事実を知りたいシンガーは誰もいないだろう。)
もともとの音程修正ツールとしても欠かせなくなっているようだ。Times の記事では Britney Spears (ブリトニー スピアーズ) の名前が挙がっている。さもありなん。
ただ、こう聞くとちょっと興醒めな気がするなぁ。 記事中でもAuto-Tune があるためにシンガーがサボったり、音楽の良い部分も伝わってないことが現在の音楽業界の売り上げ不振に繋がるのではといった指摘をしているが、その通りだと思う。
オレはライブ音源が好きで、今でも Live Music Archiveを愛用してる。 それはやっぱり、少々音が外れたり、雑に聞こえても Live 音源から聞こえてくるアーティストの思いとかがダイレクトに伝わるからだと思う。もちろんCD上ではある程度の調整は必要かもしれないけど、それをただ、数字上正しい状態にするのではなく何か伝わるように使って欲しいなぁ。
参考/合わせて読みたい:
2009年2月22日 at 9:46 AM
初めまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。
CD音源制作にかかわらせていただいている立場から言わせていただくと、
「本来商品になりえないレベルのボーカル」を「なんとか商品にできるレベル」に
引き上げられるという点ではAutotuneは便利です。
ただこれは大事なことなのですが、
Autotune(または同じような機能のmelodyne)等ができるのは、
ボーカルの「音程」、「音量」、「タイミング」の調整のみで、
ボーカルの最も重要な要素である「歌いまわし」や「表情」を調整
することはできません。
つまり、どんなにピッチが安定してて、リズムが正確であっても、
魅力がないボーカルを、すばらしいボーカルに昇華させることは
Autotuneではできないのです。
これはつまり、現状の収録現場では、「魅力があり、表情があるボーカル」を
録音することにプライオリティが置かれていることを意味しています。
特に制作予算がローバジェットになっている昨今では、
収録スタジオ料金やアーティストやスタッフの拘束時間を増やすことができないので、
限られた時間で収録できた「表情付けはすばらしいけど、ピッチやタイミングが甘いテイク」を
使えるものにするために、どうしてもこれらピッチ修正ツールに頼ることになります。
逆に言うと、潤沢に予算&時間&人材が確保できればAutotuneっていらなくなるんですよね。。。
ご指摘の事項は、業界にかかわるものの端くれとして、
非常に耳が痛いところではあります。。。
エンジニアさんによって、主義は分かれると思いますが、
私がAutotuneなどを使うときは、少々音程が外れていたり、ラフに歌っていても、
それがそのボーカルの味であるならば、なるべくスポイルしない
形で、残すようにしていますし、私の知り合いのエンジニアさんたちも、
みなそのラインは守っているようです。
直しすぎて棒みたいなロボットみたいなボーカルにしてしまうエンジニアさんは、
やはりヘボなエンジニアってことなんじゃないかなぁ。
2009年2月22日 at 5:46 PM
現場からの意見ありがとうございます。
記事だけを鵜呑みしていてはわからなかった点を教えてもらえてとてもためになりました。
予算の関係からの時間の制限を補うツールという見方は、Times の記事の内容と表裏一体で単純に良い悪いといった判断はできないですね。
修正が可能という事実を怠けられる意味で取らず、純粋に少しでも良いものを作るという意味で考え続けてもらいたいです。