ベータバージョンの変化

「ベータ」といえば、かつては一時的で一般には非公開で、開発の最終段階に達しているソフトウェア試用版を指す言葉だった。だが最近では、誰でも入手可能なウェブベースのサービスで、今後も機能の追加や変更がありうるもののほとんどはベータと呼ばれるようになってきているようだ。

最近はベータバージョンのサービスがいっぱい出てきて、正式になるのはそれから1年以上あとということがいっぱいある。 たしかに、ベータという言葉が免罪符のようになって少々のバグや問題は許してもらえるということがあるが、それ以上に最近のソフトウェア開発のスタイルの変化の方が大きいような気がする。

ドッグイヤーと例えられるように、コンピュータ業界は物事がものすごい勢いで進んでいく。 1年前に最新だと言われたネタも1年経ったらどこでも使われるような一般的なネタになることもある。 そんな状態では、完全なソフトウェアを作るのにこだわって発表するのに1年も2年もかかっていたら、ライバル会社に出しぬかれてしまう。 それなら、少し途中でもいいから発表し、フィードバックを得ながら改良していく方が開発側にとっては嬉しい。

あと、開発の始めかたにも原因はあると思う。 シリコンの谷はいま。 にも書いてあったようなことはうちの会社でもよくある話だ。

「アイデアを形にするためには、
自分のアイデアを人に見せられる形にすることが必要」
(中略)
実際に動くものにするといっても、最終形とは
程遠くても構いません。不完全でも、欠点があっても、
もしそのアイデアを実現するものが存在したら、
こんな風なんだということを、
まわりの人が体験できれば良いのです。

いいのか悪いのかはわからないけど、うちの会社でもアイデアをどれだけ語ってもなかなかわかってもらえない。 実際に動いているものを見て、始めて納得してもらえるという感じだ。

提案書を書いて、ナントカ会議にまわして承認とってという形でスタートしないので、結構いい加減な形で最初のバージョンができあがる。そして、それに肉付けする形でソフトウェアができあがっていくのだが、 時には最初のバージョンとは全然違ったものになったりもする。 なので、できあがったソフトウェアには何となく不安が残る部分もでてきたりする。 そんなときはベータ期間で実際に使用してもらって問題がなかったという事実をもって、正式版にしようと思ってしまうこともよくある。

メーカの人にしてみたらうらやましいと思う開発スタイルだとは思うが、今こういったサービスに期待されていることは品質より、新しいエクスペリエンスだと業界が考えているためこういったスタイルに落ちついているのだと思う。 そういう意味ではまだまだ成熟していないのだろう。 きっと「ベータ」に代わる新しい言葉も産まれたりして、まだしばらく続くのだろうな。


2 Comments

  1. そういや、「RC(Release Candidate)」も「ベータ版」の言い換えだなぁ。

  2. それってソフトの世界だから許されているというのもあるけどね。ハードだとそれが許されないから。といってもハードのソフトへの依存度は高くなる一方なので、そんな優雅なことばかり言ってられないっていうのも本音。あとは、ベータだって本当に使ってもらってフィードバックもらって何ぼの世界だから、そこも思っている以上に難しい問題だと最近思うのであります。
    ま、レイカーズ負けたので良しとしよう。

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